2022年日本女子プロゴルフトーナメント第2戦「明治安田生命レディス」で、台湾出身のサイ ペイイン選手が初優勝を飾りました。サイ選手は2019年ステップ・アップ・ツアーの賞金ランキング2位の選手です。賞金ランキング2位までに与えられる来期JLPGAツアーへのリランキングまでの前期出場権を最大限有効に使い、2020-21年の賞金ランキング36位に入りシード権を掴みました。

ここでは、ここ数年のステップ・アップ・ツアーで成績上位者に与えられる特典や権利の推移と、権利取得者のそれからについて紹介します。

ステップ・アップ・ツアーとは？

ステップ・アップ・ツアーはJLPGAツアーに出場資格のない選手や新人に、試合経験を積ませる目的で作られたツアーです。1991年に2試合が開催され2022年は3月29日～30日の2日間開催される「ラシンク・ニンジニア／RKB レディース」を皮切りに16試合が予定されています。

ステップアップツアーの歴史や出場資格、今期の注目選手

2017年より賞金ランキング制を採用して特典も整備

1991年2試合から始まったステップ・アップ・ツアーは、試合数の増減などありながらも順調に推移し、2017年には世界ランキングのロレックスランキング対象ツアーとなります。併せて賞金ランキング制度も採用して、特典も整備。これまで各大会の優勝者にしか与えられなかった特典が、賞金ランキング上位者にも与えられるようになったのです。

2019年のQT規格変更で現行特典に

2017年の賞金ランキング1位は、JLPGAツアーリランキングまでの前半戦出場資格。2～5位の選手にはQTファイナルステージからの参戦資格。6～10位の選手には各大会の優勝者と共に3rdステージからの参戦資格が与えられました。各大会の優勝者よりも年間を通した賞金ランキング上位者の方が評価された内容でした。

この特典は2018年まで続きますが、2019年のQT規定変更で、QTが2ステージ制になったことに合わせて変更されます。2019年に変更された特典は、賞金ランキング1位と2位の選手はJLPGAツアーリランキングまでの前半戦出場資格。3～10位の選手は各大会の優勝者と共にファイナルステージから参戦できるというものでした。

各年度賞金ランキング上位者とそれから

2019年賞金ランキング2位はサイ ペイイン選手でしたが1位の選手や他の年度のランキング上位選手が気になりますね。

2017年は天良 枝里子（てんら えりこ）選手

出典：日本女子プロゴルフ協会

ステップ・アップ・ツアー2017年賞金ランキング1位は、優勝3回で賞金獲得額¥20,604,785の天良枝里子（当時 谷河枝里子）選手でした。2018年はJLPGAツアーに19試合出場。1stリランキング37位、2ndリランキング50位で賞金ランキングは103位とシード権獲得はできませんでした。2019年はステップ・アップ・ツアー1試合のみの出場、2020-21年は11試合の出場に終わっています。2022年シーズンはQTランキング168位からの参戦となります。

2018年は河本 結（かわもと ゆい）選手

出典：日本女子プロゴルフ協会

2018年賞金ランキング1位は、優勝4回で賞金獲得額¥18,213,000の河本結選手でした。2019年はJPGA初戦の「ダイキンオーキッドレディス」は予選落ちでしたが、4戦目の「アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI」では2位に5打差をつける快進撃で初優勝を飾りました。

その後も優勝争いを繰り返し、2019年は32試合に出場。優勝1回含むトップ10には11回入って獲得賞金額¥88,025,906で賞金ランキング6位に入りました。2019年オフにはUSLPGAのQスクールを受験。9位タイの上位通過を果たし、2020年はUSLPGAツアーに参戦します。

しかし2021年には日本ツアーに戻り、賞金ランキングは61位ながらメルセデス・ランキングで53位に入り2022年前期出場権を獲得しました。2022年は2試合終わってメルセデス・ランキング74位と苦しい立ち上がりです。

河本 結使用ドライバー

キャロウェイ　ローグ ST MAX ドライバー

2019年はヌック・スカパン選手

出典：日本女子プロゴルフ協会

2019年賞金ランキング1位は、優勝4回で賞金獲得額¥20,920,764のタイ出身ヌック・スカパン選手でした。2018年のプロテストに不合格となり、TP単年登録選手として2018年のQTを受験した選手です。2018年のQT88位の資格で、2019年のステップ・アップ・ツアーに参戦しました。

2020-21年前期出場権獲得は、JLPGAツアーで優勝するかシード権を取って会員になれるチャンスでしたが、2020年はコロナ禍により入国できず試合そのものに出場できませんでした。2021年になってやっと9試合に出場するも思うような結果は残せず、賞金ランキング140位でシード権は獲得できませんでした。

2020年度、21年度もプロテストを受験しましたが不合格に終わっています。2021年は非会員のためQTの受験もできませんでした。2022年のプロテスト合格を目指して欲しいものです。

2020-21年の1位2位はリ ハナ選手と小野 祐夢（おの ひろむ）選手

出典：日本女子プロゴルフ協会
出典：日本女子プロゴルフ協会

2020-21年シーズン賞金ランキング1位は優勝3回で賞金獲得額¥18,314,916の韓国出身リハナ選手。2位は優勝2回で賞金獲得額¥14,717,047の小野祐夢選手でした。2022年シーズン2試合終了時点でリハナ選手はメルセデス・ランキング33位、小野選手は48位とシード圏内につけています。

小野 祐夢使用ドライバー

ダンロップ　スリクソン ZX5　ドライバー

ステップ・アップ・ツアーの出場可能QT順位は？

JLPGAツアーへの出場可能なQTランキングは、出場総数108名大会で協会選考選手が90名、120名大会で100名から計算すると、シード選手52名と産休復帰1名、前期出場資格者7名の60名を除いた30位と40位までとなります。

実際には資格があっても出場しない選手もいるため、順位が下がり2022年1、2戦は108名大会でしたが40位前後まで出場資格が下がりました。

同週開催のJLPGAツアーによって影響を受ける有資格QT順位

それではステップ・アップ・ツアーはどうかというと、それほど単純ではないのです。JLPGAの規定では、同一週のJLPGAツアーとステップ・アップ・ツアー同時出場はできません。同一週に行われるJLPGAツアーの大会によって、ステップ・アップ・ツアーへの出場可能順位も大きく影響を受けるのです。

ステップ初戦はヤマハレディースと同じ週

3月29日開幕の2022年シーズン、ステップ・アップ・ツアー初戦「ラシンク・ニンジニア／RKB レディース」はステップ・アップ・ツアーでも1試合しかない2日間競技です。出場総数108名で争われ予選落ちはありません。出場者108名のうち90名の協会選考選手は過去1年間のステップ・アップ・ツアー優勝者を除いて、ほとんどがQTランキングによって決まります。

同一週開催のJLPGAツアーは「ヤマハレディースオープン葛城」。こちらは出場総数120名で協会選考選手は100名と、この時期ではいつもより10名多い大会です。JLPGAツアーの出場者が多くなる分、ステップ・アップ・ツアーの出場資格もランキング下位まで下りてきます。

影響が多い予選会

もう1つ影響を与えるのがJLPGAツアーの予選会。通常マンディと呼ばれる主催者推薦選手の1部を決める予選会は大会開催週の月曜日に行われることが多く、ステップ・アップ・ツアーにエントリーした選手は予選会には出場できません。規則で、大会初日の1周間以内に行われる予選会に出場するためにはステップ・アップ・ツアーのエントリーを取り消さないといけないとあるからです。

JLPGAツアーはシーズン中ほぼ毎週開催されるため、ステップ・アップ・ツアーへの出場順位にも大きく影響を与えます。

ステップ・アップ・ツアーの賞金

JLPGAとステップ・アップ・ツアーの賞金総額を比較すると…？

日本女子プロゴルフ協会から発表された2022年度JLPGAツアーの賞金総額は38試合で42億9600万円。一方、ステップ・アップ・ツアーの賞金総額は16試合で3億5500万円でした。試合数で1/2弱、賞金総額では1/10にも満たない規模です。

しかし、一つ一つの試合を見てみると、JLPGAに対抗できる規模の大会もあるのです。

優勝賞金￥7,200,000の大きな大会も

その代表的な大会が9月27日～30日の日程で開催予定の「Sky レディースABC杯」。ステップ・アップ・ツアーでは唯一の4日間大会で賞金総額は¥40,000,000、優勝賞金は￥7,200,000円、出場予定総数120名です。2021年大会からロレックスランキングフラッグシップイベント対象になりました。

賞金獲得額1千万円超えの選手が増えた

2021年大会の優勝者はJLPGAツアー優勝5回の服部真夕（はっとり まゆ）選手。この優勝でステップ・アップ・ツアー最終成績は、賞金獲得額¥11,756,142でランキング4位になっています。2016年に賞金ランキング1位選手が1千万円超えを果たして、2017年には2千万円を超えました。そして、1千万円超えは5名に増えています。

今後ますます注目のステップアップツアー、全試合視聴はできる？

全試合をCS放送スカイAで放送しています。試合によっては地上波でも放映するケースがありますが、試合日程は水曜日や木曜日に始まって、金曜日や土曜日に終わるケースが多いので開催日のチェックが必要です。

よくある質問

Q.ステップ・アップ・ツアーの過去映像って見られるの？

A.YouTubeのJLPGAオフィシャルチャンネルでダイジェストを見ることは可能です。過去の戦いを見て今年のステップ・アップ・ツアーの開催を待ちましょう。

Q.ラシンク・ニンジニア／RKB レディースは会場で見られる？

A.残念ながら会場での観戦をする事はできません。しかしCS放送スカイAで全試合観戦できますので、家で試合を見届けましょう。

Q.QTって何？

A.クォリファイングトーナメントの略でQTと言います。来季のシード権を持っていない選手が出場し来季の出場権を争いあう大会のことです。